小宮理実のお味噌ふくふく便り

冬至

2020.12.18

京都在住の料理研究家・小宮理実です。

令和2年も残りわずかとなりました。

師走には、24節気の「冬至」があります。昼の時間が最も短く、夜の時間が最も長くなる日で、今年の冬至は、12月21日にあたります。京都では、かぼちゃを食べて柚子風呂に入り、無病息災を願います。冬至ならではのお楽しみを用意して、のんびり過ごすのもいいものですね。

邪気祓いによく登場するのが、小豆とかぼちゃ(ナンキン)を一緒に煮た、「いとこ煮」です。かたい食材から追い追い(おいおい)煮るという調理手順から、おい=甥とかけあわせた言葉あそびから生まれた料理。甘くてホクホクしたかぼちゃ煮にゆでた小豆が加わり、見た目にもご馳走。いつものかぼちゃ煮も、小豆が加わることでにぎやかになります。子供のころはじめて口にした時はうれしくて、また作って欲しいとリクエストした思い出があります。ほんのりと甘く煮含めた、かぼちゃと小豆の組み合わせがとてもいいのです。

また、冬至には「ん」のつくものを口にすると「運」が良くなるとも言われてきました。時計まわりにご紹介すると、ナンキン、ニンジン、キンカン、レンコン、カンテン、ウドン、ギンナンの七品と言われています。ん=運と語呂合わせをするところなど、昔の人はユーモアたっぷりですよね。日々の暮らしの中で楽しみをみつけ、暦の中の行事と向き合う。何とも微笑ましく、また、真の豊かさの意味を考える良い機会に思えます。

真っ赤な唐辛子にも厄除けの意味があります。赤く辛い唐辛子で邪気を祓ったのでしょう。お料理に使うのはもちろんですが、今回はしつらえに使いました。その時期に旬を迎える食材を使って行事を過ごすことは、無駄もなく、今の時代にも学ぶべき要素が含まれていますね。

冬至の食を、現代風に考えてみたのが、手軽に作れる「冬至オードブル」です。主役は柚子。余すことなく使いきりたいことから、柚子の皮をすりおろし、果汁と一緒に西京味噌、バターと混ぜ合わせて「柚子味噌バター」を作ってみました。ナッツやドライフルーツが入ったバゲットに、生ハムやクレソンも添えて。冬至の長い夜を、柚子味噌バターと白ワインで楽しんでください。

今年もお世話になりました。どうぞ素敵な年末年始をお過ごしくださいませ。

京都から福をこめて「お味噌ふくふく便り」でした。

料理研究家 小宮理実(こみやりみ)

料理研究家。おせち料理の専門家として、新聞・テレビ・ラジオへ多数出演。京都で料理教室「福千鳥」(会員制)を主宰。おせち料理や節句の食など、日本文化や季節感を大切にした行事食を伝える活動を行う。
1971年・京都室町生まれ。
2018年11月30日、小宮真由から小宮理実(こみやりみ)に活動名を改名しました。

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