小宮理実のお味噌ふくふく便り

端午の節供

2020.05.02

京都在住の料理研究家・小宮理実です。

新緑が香る美しい季節となりました。
きらきらと輝きを増す木々や草花。
この時期は特に成長も著しく、毎年、自然を愛でる喜びを感じる季節です。

5月といえばこどもの日、端午の節供です。
男の子の健やかなる成長を願い、菖蒲湯に浸かったり、(かぶと)や鯉のぼりを飾り、お祝いをする日ですね。

昔は菖蒲の葉や根っこを酒に浸していただいたり、
菖蒲の葉と(よもぎ)を門に吊るす「軒菖蒲(のきしょうぶ)」で、邪気祓いをしたそうです。
軒菖蒲は、今では目にすることも少なくなりましたが、守っておられるお店もあり、
文化を守り、継承することへの心意気に触れると、心から感謝の気持ちが溢れてきます。

我が家では、庭先で育てた葉菖蒲と蓬を一つにまとめて、鯉のぼりを手にした御所人形にあしらってみました。
見ているだけで、心が安らぐこのお顔。
あまりに可愛くて、ついついこちらが微笑んでしまいます。

食べ物では、(ちまき)や柏餅をいただく日ですね。
京都には、柏餅にも「味噌あん」があります。
こしあんや、つぶあんはご存知の方も多い中、え? 味噌あん?
そうなんです! はじめて知った方は皆さん驚かれるんですよ。
お味はと言うと、甘い餡の中にほんのりお味噌の香りが。
このバランスが絶妙なんです。
私は断然、味噌あん派!
慣れ親しんでいる味わいです。

さて、お料理のほうも「健やかなる成長」がキーワード。
すくすく育つタケノコをはじめ、ぷっくりした姿が愛らしい空豆など、天に向かって大きく育つ、時節のお野菜を使います。
今回は、タケノコごはんに、高野豆腐と空豆をやさしく煮含めてみました。

その他、節供飾りの兜にちなんで、旬でもある「鯛のかぶと煮」を。
鯛の(かしら)を使って、人の頭に立つような、立派な人に育ってくださいね、と願いを込めています。

鯛はめでたいの語呂あわせからも、愛され続けている魚。
京都では、わざわざ「さん」を付けて、お鯛さんと呼んで親しまれています。

そして、やさしい味わいの西京味噌を使った豆腐と三つ葉のお味噌汁でほっこりと。

自然の恵みで邪気を祓い、こどもたちの成長を願いましょう!

京都から、愛をこめて。「お味噌ふくふく便り」でした。

料理研究家 小宮理実(こみやりみ)

料理研究家。おせち料理の専門家として、新聞・テレビ・ラジオへ多数出演。京都で料理教室「福千鳥」(会員制)を主宰。おせち料理や節句の食など、日本文化や季節感を大切にした行事食を伝える活動を行う。
1971年・京都室町生まれ。
2018年11月30日、小宮真由から小宮理実(こみやりみ)に活動名を改名しました。

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