小宮理実のお味噌ふくふく便り

京の節分

2019.01.21

京都在住の料理研究家・小宮理実です。
寒さが厳しい毎日ですが、暦の上ではもう春ですね。

節分といえば、近頃は立春の前の日にあたる、2月3日の節分だけが大きく取り上げられるようになりましたが、本来ならば節分は年に4回、立春、立夏、立秋、立冬の前日にもあります。
字のごとく「節を分ける」という意味で、季節の変わり目を表しています。

立春は一年のはじまり。その前日にあたる節分は大晦日でもあるのです。
そんなことからも、節分に厄払いはつきものです。

遥か昔、この時期には悪さをする鬼が京の街に出没し、女こどもを困らせていました。
そこで、鬼の苦手な「いわしひいらぎ」の登場です。

まずは、鰯。鬼は鰯の匂いが苦手だったようです。特に鰯を焼くと、人間にとっては美味しそうないい匂いが立ち上りますが、鬼にとってはそうはいかないようで。

そして、柊ですが、柊の葉はとげとげしていることから、この尖ったものが目に刺さると連想し、鬼はとても怖がったようです。

そこで京都に暮らす人々は、鬼が家にやってこないようにと鰯の頭を焼いたものを柊の枝に刺して、門戸へさげておきました。

「鰯と柊」は鬼の苦手を組み合わせた最強の撃退アイテムだったのでしょうね。
おまじないみたいで好きだな~。
さて、節分のお食事ですが、祖母や母がよく作ってくれたものは、麦ごはんに青海苔のかかったとろろ芋、鰯の焼いたん、切り干し大根の炊いたんの食事。炒り豆は年齢よりひとつ多く口にしていました。

素朴な食事ですが、毎年楽しみにしていた献立、すでに懐かしい。子供の頃は、夜になると豆まきができると、朝からそわそわしていたことを覚えています。

私の代からは、食事にも変化が。時代の流れを取り入れて恵方巻を作って食べるようになりました。
両親からは「昔はこんなの無かったわ~」と毎年同じことを言われつつも、ひたすら巻きずしを作っていると、ありがたいことに、腕前は年々うなぎ登り。料理教室の生徒さんからも人気の献立となりました。
次第に家族も「今年も巻きずしは作るの?」と楽しみにしてくれるようになりました。

今回は上等な和菓子が入っていた木箱を再利用し、お弁当風に仕立ててみました。
恵方巻きは奉書紙を巻いて、麻ひもで結んでいます。
2月の京野菜、畑菜はごま和えに、切り干し大根の炊いたんを添えて。
節分ですので、大豆の煮豆に、お多福さんにちなんでぷっくりとしたお福豆を。もちろん鰯の焼いたんも忘れずに。

大豆つながり、笹麩餅に梅の生麩、豆腐と九条ねぎでお味噌汁を。優しい甘味は西京味噌ならでは。
こころとからだにじんわりとゆきわたります。

寒いこの時期、白いお汁のお陰でぽっかぽかです。

季節の行事はいとたのし。
京都からお味噌ふくふく便りでした。

料理研究家 小宮理実(こみやりみ)

料理研究家。おせち料理の専門家として、新聞・テレビ・ラジオへ多数出演。京都で料理教室「福千鳥」(会員制)を主宰。おせち料理や節句の食など、日本文化や季節感を大切にした行事食を伝える活動を行う。
1971年・京都室町生まれ。
2018年11月30日、小宮真由から小宮理実(こみやりみ)に活動名を改名しました。

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