新緑の季節は「爽やかな味好み」
京都在住の料理研究家・小宮真由です。
春風もふうわりと通りすぎ、季節は初夏を迎えました。
皐月(さつき)に入ってからは
汗ばむ日もちらほらと。
緑が眩しい季節の到来です。
この時期は、葵祭をはじめ、
京都のあちこちでお祭りごとが続きます。
何かと気ぜわしいので、
手軽にいただけるお料理が
向いているように思います。
京都のハレの日の食卓といえば、やっぱりおすし。
特にこの時期、さばずしの登場回数は多く
家庭でもよく作ります。
その他、ささっと出来る、おつゆ(玉子のすまし汁)や
豆腐の白和えが我が家の定番でした。
また、家族で食卓を囲みながら話すひとときも、
季節がくれた贈り物。
「今年のさばは脂がようのってる」
「ちょうどいい締め具合やな」と、
それぞれが辛口コメンテーターとして
会話を繰り広げたものです。
お台所を預かる今は
食卓はわたしの創意工夫の発表の場でもあるので
お決まりのおつゆから一歩前進、
西京味噌を使った冷し汁に仕立ててみました。
昆布と花かつおで濃いめにひいたお出汁へ
西京味噌をそっと溶いたものを
鍋ごと冷蔵庫でつめたく冷します。
具材には、今が旬のうどにみょうが、
地元で採れた露地物のきゅうりを。
うどやみょうがは、切ったら水にさらして
歯触りをよくしておきます。
きゅうりは輪切りにしてから、軽くふり塩を。
水分が浮いてきたら、ぎゅっとしぼります。
さぁ、具材も準備できました。
せっかくなので、
お気に入りのガラスの器によそってみました。
お椀もいいけど
手軽なタンブラーも素敵やわ〜
と、大きくひとり言。
西京味噌の優しい乳白色の中に
旬のお野菜が涼しげに顔をみせています。
仕上げにはすだちの搾り汁を数滴落として、
爽やかな冷し汁の完成です。
みずみずしいお野菜の
しゃり感を楽しんでもらえたら、うれしい。
さばずしは竹皮に包めば、
ちょっとしたおつかいものになります。
今回は、染付けの鉢に盛って、
庭の木の芽を添えてみました。
この時期ならではの涼しげな色のコントラストに
おもわずにっこり。
その他、きずしは本当によく作ります。
きずしというのは、しめさばのこと。
この生酢に漬かっている状態のさばを眺めるのが
わたしのひそかな楽しみ。
青と銀色の背中が実にきれい。
さばのマーブル鑑賞といったところでしょうか。
美しい模様に出会うと、うっとりしながらも
心の中でガッツポーズ。
一枚として、同じ背模様がないのですから
これぞ、自然界が運んでくれた芸術ですよね。
旬の食材とお味噌から季節を楽しむ。
京都から、ふくふく便りでした。
料理研究家 小宮理実(こみやりみ)
料理研究家。おせち料理の専門家として、新聞・テレビ・ラジオへ多数出演。京都で料理教室「福千鳥」(会員制)を主宰。おせち料理や節句の食など、日本文化や季節感を大切にした行事食を伝える活動を行う。
1971年・京都室町生まれ。
2018年11月30日、小宮真由から小宮理実(こみやりみ)に活動名を改名しました。