如月(きさらぎ)の食卓
はじめまして。
京都在住の料理研究家、小宮真由です。
これから京都より福をこめて、
「お味噌な暮らし」を綴って参ります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
京都のおへそにあたる
御所の西側には室町という地域があり、
街中でありながら不思議に凛とした空気が流れています。
そこには、長年の修練に磨かれた高い技術を持つ職人さんや、
日本の伝統文化を担う方々も多く暮らされています。
西京味噌さんの本社があるのもこの地域。
実は私も、その一角で生まれました。
しきたりにうるさい祖母と、料理熱心な母のもとで、
私もいつしか食いしん坊になったようです。
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西京味噌さんは、
宮中御用達(京都御所)のご用命を賜った老舗です。
そのお味噌は、
奥ゆかしく雅な味わい。
さらりとした舌ざわりに
まろやかな口どけが特徴です。
大豆を米麹で丁寧に発酵・熟成させたお味噌は、
お出汁との組み合わせ次第で
どんな食材ともいかようにも調和してくれます。
日々の食卓に使いやすいのは
こんなお味噌ではないでしょうか。
そして、西京味噌のほのかな甘みは、
口にした人を優しく癒してくれます。
さて、京都では、
年が明けて立春を過ぎたあたりになると、
食卓によく粕汁が登場します。
京都の粕汁といえば、西京味噌がないと始まりません。
わが家は西京味噌を少し多めに使います。
昆布でひいた出汁に、西京味噌と酒粕を溶いた汁ですが、
具材は大根、人参、ごぼう、豚肉。
そして欠かせないのは細切りにしたお揚げさん。
仕上げに芹(せり)をこまこう刻んだものをちらして、
はふはふ言いながら
白いごはんといただくのですが、
これがおいしくて。
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雪の舞う季節に白い粕汁をいただくと、
おなかの底からあったまって
寒い冬もよいもんやなぁーと思ったり。
粕汁を作る日は量もたっぷりと用意し、
二日間に渡りいただきます。
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一日目はつくりたてのサラサラした粕汁を
翌日は少し煮詰まった
トロトロした粕汁を楽しむのです。
子供の頃は、お台所から粕汁のいい香りが広がると
もう待ちきれなくて
母のとなりで鍋の中をのぞきこんでみたり。
立春もすぎ、初午の頃になると、
お稲荷さんと畑菜のからし和えをいただきます。
2月の最初の午の日は、稲荷神のお祭りなのです。
その時も西京味噌入りの粕汁が食卓に。
粕汁の白と、からし和えの若緑に、子供心に春の訪れを感じたものでした。
今日のお味、ほんまおいしいわ〜と
大人に混じり意見しながらいただくごはんの
おいしかったこと。
目をとじて思い出すと
今でもしあわせな気持ちになります。
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現在は、祖母や母から伝えてもらった味わいに、
私が足したり引いたりと
ようやく思いの味が作れるようになりました。
そして、西京味噌入りの粕汁を
夫や両親が目を細めながら
きれいに飲み干してくれることが
何よりも嬉しく福々しい時間です。
季節折々の家庭料理を食べさせてもらった
祖母や両親に、
そして食を楽しむこころを
いつも傍らで支えてくれた
お味噌の存在に、ありがとうをこめて。
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料理研究家 小宮理実(こみやりみ)
料理研究家。おせち料理の専門家として、新聞・テレビ・ラジオへ多数出演。京都で料理教室「福千鳥」(会員制)を主宰。おせち料理や節句の食など、日本文化や季節感を大切にした行事食を伝える活動を行う。
1971年・京都室町生まれ。
2018年11月30日、小宮真由から小宮理実(こみやりみ)に活動名を改名しました。