小宮理実のお味噌ふくふく便り

京の骨正月

2020.01.17

京都在住の料理研究家・小宮理実です。

年も明けて、令和2年を迎えました。

本年も「お味噌ふくふく便り」を、
どうぞよろしくお願い申し上げます。

松の内(関東は7日、関西は15日)も過ぎて、
みなさん、少しほっとされている頃でしょうか。

1月を睦月と呼びますが、
その言葉には、家族揃って仲睦まじく……、と言う意味が込められているそうです。
素敵ですよね。
そんな理由から睦月と呼ばれるようになったと知ったとき、
嬉しくてつい笑みがこぼれました。

さて、私の子供の頃の睦月はと言うと、
お正月は多くのお店が閉まっていることがほとんどでした。
今となれば、年末年始の食材を買いこんでいた頃が懐かしく思い出されます。

七草粥をいただくあたりになり、
ようやくお店が開いて、買い物がはじまる。
お台所を預かっていた母は大変だったのではないかな~、と尋ねてみると、
意外にそうでもなかったようです。

あるもので料理をする「創意工夫の時間」として過ごしたようでした。
京都で言う「始末のこころ」ですね。

そんな始末のこころが見える、
睦月の京都の代表的なお料理といえば、鰤大根です。

1月20日あたりを骨正月と呼びますが、
かつては年越しのご馳走として一尾用意した荒巻鮭を、お正月が過ぎても、少しずつ身を削ぎいただいていました。
睦月も半ばには、ちょうど魚の頭やアラ、骨が残る頃。
その骨も料理に使って、骨正月を過ごしたのです。

母も、鰤のアラを旬のお大根といっしょに炊いてくれました。
アラや骨から出る魚のだしが大根によくしみて、
それはそれはおいしくて。

この時期ならではのご馳走を、
今でも楽しみにしていることから、
魚屋さんにお願いして、鰤のアラやカマをとっておいてもらいます。
お大根は厚さ2センチ程度の半月に。
下茹での代わりに、電子レンジで加熱をして味がしみやすいようにしておきます。

使い込んだお気に入りの土鍋で、生姜の薄切りとたっぷりの煮汁を加えて、コトコト煮含め完成です。
柚子の皮の千切りをのせると、食卓は冬の香りでいっぱいに。
添えるのは決まって菜の花の辛子酢味噌がけ。
西京味噌に、砂糖、和辛子、酢を溶いて。
ちょっぴり初春を意識したお献立に、目もこころも華やぎます。

わたしの場合、この時期にようやくお正月道具をお片付け。
ほっとした気分を噛み締めながら、ひと休みひと休み。

日々の暮らしにメリハリをつけたくて、
女正月と称して、ちいさなご褒美を用意します。
それは、好物の干し柿。
初春の空を眺めながら口いっぱいにほおばり、
自分にご苦労さん。

毎年同じことを繰り返しながら、
こうして日々を過ごせることはありがたいことだな~、
としみじみ思うようになりました。

さて、今年も西京味噌を使ったおいしいもの、
この世に送り出すぞー。
京都から、お味噌ふくふく便りでした。

料理研究家 小宮理実(こみやりみ)

料理研究家。おせち料理の専門家として、新聞・テレビ・ラジオへ多数出演。京都で料理教室「福千鳥」(会員制)を主宰。おせち料理や節句の食など、日本文化や季節感を大切にした行事食を伝える活動を行う。
1971年・京都室町生まれ。
2018年11月30日、小宮真由から小宮理実(こみやりみ)に活動名を改名しました。

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