小宮理実のお味噌ふくふく便り

桜の季節の「春ごはん」

2019.04.02

京都在住の料理研究家・小宮理実です。

新しい息吹きを、肌で感じる春がやってきました。
木々や草花も、日に日に開花しはじめる頃。
桜の花も、美しい姿で楽しませてくれます。

芽吹いてくる頃は、特に食事の面でも、春の「気」を含んだ野菜に目がとまります。
たけのこにはじまり、たらの芽、ふきのとう、そら豆、こごみなど。淡い緑の野菜は見た目にも愛くるしくて、ついつい野菜観賞を。
たらの芽なんて、あまりの見事なフォルムにじっと細部を見つめてみたり。
ちいさなことですが、料理の楽しさは、作るだけにとどまらないのです。

ふきのとうは、あの特有の苦味が好きで、春をつかまえたとばかりに、せっせとふきのとう味噌を作ります。

わたしが作るふきのとう味噌は、京都らしく西京味噌で作るのがポイント。
でも、ごはんだけでなく、パンにも合うように仕上げます。
まずは、フライパンに良質なオリーブオイルを馴染ませ、粗く刻んだふきのとうを炒めます。つぎに、西京味噌を酒に溶いておいたものを加え、よく混ぜたら、〆に黒胡椒をふり、味を調えます。

とある春の昼下がり、こんな献立はいかがでしょう? 期間限定のお野菜は天ぷらにして、ふきのとう味噌をつけていただきます。

他には豆ごはんに菜の花のお味噌汁、日の菜のおつけもの。
春野菜のうるいに、ホタルイカの酢味噌和えを添えたら、立派なお食事の完成です。

桜に想いを寄せながら、からだに染み渡る野菜の味わい。かけがえのないもののように感じるのは、この時期にしか味わえないから。
春のほろ苦さが恋しくなるのは、大人の証かもしれませんね。
年に一度の贅沢です。

桜の季節の春ごはん。
京都からお味噌ふくふく便りでした。

料理研究家 小宮理実(こみやりみ)

料理研究家。おせち料理の専門家として、新聞・テレビ・ラジオへ多数出演。京都で料理教室「福千鳥」(会員制)を主宰。おせち料理や節句の食など、日本文化や季節感を大切にした行事食を伝える活動を行う。
1971年・京都室町生まれ。
2018年11月30日、小宮真由から小宮理実(こみやりみ)に活動名を改名しました。

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