小宮理実のお味噌ふくふく便り

春はぼたもち

2020.03.19

京都在住の料理研究家・小宮理実です。

京都にも、本格的な春がやってきました。

「春分」というと、一般には昼と夜の時間が同じになる日のことを指し、「春分の日」という祝日にもなっていますが、二十四節季に当てはめれば、令和二年の今年は三月二〇日から四月三日までの期間を言います。この時期を境に、日増しに日が長くなり始め、暖かさを実感するようになります。

春分の行事と言えば「お彼岸」ですね。
お彼岸は年に二回あり、春分の日と秋分の日を中にして、前後各三日の期間を指しています。

お彼岸は、ご先祖様を敬う日。
お墓参りをして、きれいにお墓の掃除をし、御塔婆おとうばを立て、シキミや色のついたお花を供えます。
幼き頃のお墓参りの記憶をたどってみると、祖母が口にしていた言葉が浮かんできます。
「さぁ、ちゃんと日頃のお礼言うときや」
「ご先祖様、いつも守ってくれてありがとう、って」。
お線香を立てながら、いつも同じことを言われ続けてきましたが、いつの間にか、自ら率先してそのセリフを唱えるようになりました。

ご先祖様へのご挨拶を終えると、不思議と良いことをしたような清々しい気持ちになるものです。
これってすごく大事なことだな~と。
本格的な春を迎えるにあたり、ちょっとした儀式みたいなものに思えます。

そして、春のお彼岸のお楽しみといえば「ぼたもち」。
「おはぎ」とは何が違うの? 疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、ものは同じなんですよ。炊いたもち米を小さくまとめ、そのまわりにあんこをつけたもの。ただ、季節によって呼び方が違うんです。
かくいうわたしも、何気なく過ごしていた頃は、その違いについて考えたこともありませんでした。

簡単にお伝えすると、春に咲く牡丹の花に見立て、まぁるく形を整えたものを「ぼたもち」と呼び、秋に咲く萩の花に見立て、俵型に形を整えたものを「おはぎ」と呼びます。
意味をはじめて知った時、あまりに素敵な表現に、心に染み入りました。
日本人の感性って、本当に素晴らしいですよね。

ちなみにわたしの「ぼたもち」は、何個も食べられるように小ぶりにしています。
そして、これは子供の頃から変わらずのおまじない?
「難を転ずる」とされる南天の葉を庭から拝借し、必ず添えるようにしています。

ぼたもちのお供には、豆乳に西京味噌を加えただけの「豆乳味噌オーレ」を。
作り方は至って簡単。豆乳と西京味噌を混ぜて加熱するだけ。
分量は、豆乳(無調整)10に対して、味噌は1.5~2程度の割合です。
豆乳に、西京味噌のほんのりした甘みと香りが加わって、これが大変いいお味。豆乳の風味が苦手な人にもおすすめです。大豆と麹が美味しくいただけるので、よく作っては飲んでいます。

温かくしていただく時は、黒胡椒を加えても美味しいですよ。
つめたくしたものは、これからの季節に最適です。

日増しに春の陽気を感じる季節です。
昔から伝わる日本の行事を大切に、日々を笑顔で、健康に過ごしたいものですね。

京都から、愛をこめて。「お味噌ふくふく便り」でした。

料理研究家 小宮理実(こみやりみ)

料理研究家。おせち料理の専門家として、新聞・テレビ・ラジオへ多数出演。京都で料理教室「福千鳥」(会員制)を主宰。おせち料理や節句の食など、日本文化や季節感を大切にした行事食を伝える活動を行う。
1971年・京都室町生まれ。
2018年11月30日、小宮真由から小宮理実(こみやりみ)に活動名を改名しました。

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