小宮理実のお味噌ふくふく便り

願いをこめて「七夕料理」

2017.07.05

京都在住の料理研究家・小宮真由です。

山と文化に囲まれた
愛しの京都も、いよいよ夏本番を迎えました。

京都の夏と言えば
なんと言っても、祇園祭。
梅雨のじめじめもどこへやら〜。
お祭り気分がそうさせるのかなぁ。
この季節は日増しにわくわく感が増してくるのです。

そして、文月といえば
ロマンティックな七夕も大切な行事。
神様から「笹の節供を忘れてもらっては困りますな」
と、麗しいお声が聞こえてきそうな気がします。

ゆらゆら揺れる短冊に
願い事を書いたのはいつだっただろう?
なんて、
子供の頃を思い出してはいませんか。
でも、七夕こそ、
子供も大人も一緒に楽しめる節供だと思うのです。

日本全国で七夕にいただく料理として、お素麺があります。
その由来は諸説ありますが、
一説には、技芸上達を願い、
手先が器用になりますようにと
糸に見立てた細くて長いお素麺を口にすると良いと言われています。

何だかとっても素敵ですよね。
願いをこめていただくお食事だなんて。
それだけでも気持ちが朗らかになりそう。
あらら! 
「お料理が上手になりますように」と心で唱えた
わたしの願い事、
もしかして聞こえましたか?!

お素麺と言えば、付け合わせも大切。
元気な夏野菜を使って、
がんばりすぎず、手抜きにも見えず(ここ大切)、
七夕のお料理を用意してみました。

この季節にぴったりなのが、茄子の田楽です。
旬の茄子に、おいしい田楽味噌さえあれば簡単。
田楽味噌は、西京味噌に、お酒、砂糖、みりん、おだしを
程よくあわせて、小鍋で加熱します。

京都は賀茂茄子の田楽が有名ですが
西洋茄子を使ってもオッケーなんですよ。
きょうは八百屋さんで
ひょろっと長い、伏見のひも茄子を見つけたので
可愛いひとくち田楽を作ってみました。
まず、茄子を5センチくらいの幅で切って
たっぷりの油を馴染ませたフライパンで、切り口を下にして焼きます。

弱火で片面を焼いた後、もう片面も焼き目をつけて。
あとは蓋をして3分蒸らすのみ。
仕上げにひとつまみの塩をふりかけ、
先ほどの田楽味噌をのせて、けしの実をちらします。

手軽に作れる、茄子の田楽の完成です。
織姫様のように、おちょぼ口の方にぴったりでしょ。

その他に五節供の色、
青(緑)・黄・赤・白・黒(紫)を意識して
おいしい旬を盛り込んでみました。

緑色は、茹でた露地の枝豆と、
同じく緑色のオクラをごまあえにして。
夜空に輝くお星様に見立てて
オクラの断面は見えるようにするのもよいかと。

黄色は、とうもろこしを蒸したもの。

赤色は、皮のまま檸檬煮にしたさつまいも。

白色には、新生姜の甘酢漬けはいかがでしょうか?
ほんのり甘くもシャキシャキとした歯触りが
暑い夏にぴったり。

そして私の自信作、干しいたけの含め煮は
黒色のお料理として。
甘く深みある味わいに仕上げました。
土鍋でゆっくり煮ると、失敗なく作れます。
お素麺の付け合わせにも最高ですよね。

昔は七夕の願い事を書いたと言われる
梶の葉をうつわへ敷いて、
ちいちゃく、彩りよく、盛り付けてみました。
こんな時のためにと3年前の夏に
我が家の庭先へ梶を植えたのですが
今では見上げる程、立派に成長しました。
この季節は、梶の葉に向かって
「大きくなったね〜」なんて話しかけたりしています。

京都の七夕と言えば、旧暦で祝う方も多く
断然わたしも旧暦派。
葉月の夜空は、星が最高にきれいだから。

七夕のしつらいとして
笹に五色の短冊がおきまりですが、
居間の小箪笥の上には、雲上流の梶の葉飾りを。
床の間がなくても
敷盆にしつらえるなどの工夫を取り入れながら
旧暦の七夕に当たる8月7日あたりまで楽しみます。

目まぐるしく移り変わる時代こそ
星に願いを。
目を閉じて、童心へ帰り、
流れる風に耳をかたむけてみるのはいかがでしょうか。
きっと心にも涼がおとずれるはず。

京都から「夏のご挨拶」。
お味噌ふくふく便りでした。

料理研究家 小宮理実(こみやりみ)

料理研究家。おせち料理の専門家として、新聞・テレビ・ラジオへ多数出演。京都で料理教室「福千鳥」(会員制)を主宰。おせち料理や節句の食など、日本文化や季節感を大切にした行事食を伝える活動を行う。
1971年・京都室町生まれ。
2018年11月30日、小宮真由から小宮理実(こみやりみ)に活動名を改名しました。

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