小宮真由のお味噌ふくふく便り

おしょうらいさん

2018.08.08

京都在住の料理研究家・小宮真由です。

8月といえば、お盆。ご先祖様にいちばん近い月です。
お盆の風習はそれぞれの地域によって特色も様々ですが、
共通していること、それは、ご先祖様を敬う気持ちですよね。

お盆のことを、正式には「盂蘭盆会うらぼんえ」と言うのでしょうが私たちはもっぱら、「おしょうらいさん」と呼んでいます。
ご先祖の霊、おしょうらい精霊からきていますが、「さん」をつけると、どこか可愛らしい響きでしょ。

おしょうらいさんは、十三日のお迎えからはじまります。
それまでにお仏壇をぴかぴかにお掃除し、お花、野菜、果物、お菓子と、心尽くしのお供えを用意します。

常は餅粉をまるめてお迎え団子としていますが今年はお団子に西京味噌のあんをとろーりとかけてみました。
西京味噌に和三盆糖でほんのり甘味をプラス、とろみがつくよう吉野葛を溶いてみました。
作りながら、自分も食べたくなる出来栄えに、ちいさくガッツポーズ。
ご先祖様から「おいしいわぁ〜」と声が聞こえてきそうです。

お仏壇の準備ができたら、お墓まで、ご先祖さまをお迎えに参ります。

この日から16日までは、ご先祖様が我が家にいらっしゃることから、毎日、朝昼晩と食事を用意します。
基本は精進料理ですので、乾物を上手く使い、
昆布だしをベースにした煮物や和え物などをこしらえます。

我が家の献立をご紹介しましょう。
左上からゆばきのこ、高野豆腐の炊いたん、あらめとお揚げさんの炊いたん、南瓜煮、ささげの胡麻和え、焼き茄子など。
お昼にはおにぎりやそうめんをお供えすることも。
その年によって内容はいろいろですが、私たちもこの期間は精進料理をいただきます。
夏の疲れをとる、さっぱりとしたおかずは、体調を整えることにもつながりますね。

そして、16日の朝は決まって「あらめの炊いたん」を作ります。
あらめは昆布の仲間の海藻です。
水で戻し、お揚げと一緒に昆布だし、しょう油、みりんで、すこし甘めに炊いて仕上げます。
お味のイメージは、どちらかというとひじき煮と似ていますね。

そして、ここが大切。
あらめの戻し汁は捨てずに取っておきます。
さて、何につかうのでしょう。
実は、16日のお送りの日の朝には、玄関先へこの戻し汁をまくのです。
ご先祖様が迷われず、無事にお帰りになられるようにとの願いがこめられていて、
「追い出しあらめ」と呼んでいます。
この作業は、子供の頃から私のお役目のひとつ。
今も変わらずに続けています。

ちなみに京都では、あらめは8のつく日にいただきます。
末広がりの「八」の日に「芽」がでるようにと、縁起を担ぎました。
京都はお商売をされている方も多いことから、
日々の営みにメリハリを付け、気持ちを整える行いだったように思えます。

今年もあらめの戻し汁をまいて、おしょうらいさんもおしまい。
ご先祖様の無事帰還と、家族の無病息災をお願いし、
「五山の送り火」を見届け、京都の夏が終わります。

まだまだ残暑は続きますが、気持ちの上では秋を感じる素敵な季節です。
ご先祖様へ日頃の感謝をこめて過ごしたいものですね。
暑い京都から、お味噌ふくふく便りでした。

料理研究家 小宮真由(こみやまゆ)

料理研究家。おせち料理の専門家として、新聞・テレビ・ラジオへ多数出演。京都で料理教室「福千鳥」(会員制)を主宰。おせち料理や節句の食など、日本文化や季節感を大切にした行事食を伝える活動を行う。
1971年・京都室町生まれ。

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