小宮真由のお味噌ふくふく便り

如月(きさらぎ)の食卓

2017.02.02

はじめまして。
京都在住の料理研究家、小宮真由です。
これから京都より福をこめて、
「お味噌な暮らし」を綴って参ります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

京都のおへそにあたる
御所の西側には室町という地域があり、
街中でありながら不思議に凛とした空気が流れています。

そこには、長年の修練に磨かれた高い技術を持つ職人さんや、
日本の伝統文化を担う方々も多く暮らされています。
西京味噌さんの本社があるのもこの地域。
実は私も、その一角で生まれました。
しきたりにうるさい祖母と、料理熱心な母のもとで、
私もいつしか食いしん坊になったようです。

西京味噌さんは、
宮中御用達(京都御所)のご用命を賜った老舗です。
そのお味噌は、
奥ゆかしく雅な味わい。
さらりとした舌ざわりに
まろやかな口どけが特徴です。

大豆を米麹で丁寧に発酵・熟成させたお味噌は、
お出汁との組み合わせ次第で
どんな食材ともいかようにも調和してくれます。
日々の食卓に使いやすいのは
こんなお味噌ではないでしょうか。

そして、西京味噌のほのかな甘みは、
口にした人を優しく癒してくれます。

さて、京都では、
年が明けて立春を過ぎたあたりになると、
食卓によく粕汁が登場します。
京都の粕汁といえば、西京味噌がないと始まりません。
わが家は西京味噌を少し多めに使います。
昆布でひいた出汁に、西京味噌と酒粕を溶いた汁ですが、
具材は大根、人参、ごぼう、豚肉。
そして欠かせないのは細切りにしたお揚げさん。
仕上げに芹(せり)をこまこう刻んだものをちらして、
はふはふ言いながら
白いごはんといただくのですが、
これがおいしくて。

雪の舞う季節に白い粕汁をいただくと、
おなかの底からあったまって
寒い冬もよいもんやなぁーと思ったり。
粕汁を作る日は量もたっぷりと用意し、
二日間に渡りいただきます。

一日目はつくりたてのサラサラした粕汁を
翌日は少し煮詰まった
トロトロした粕汁を楽しむのです。
子供の頃は、お台所から粕汁のいい香りが広がると
もう待ちきれなくて
母のとなりで鍋の中をのぞきこんでみたり。

立春もすぎ、初午の頃になると、
お稲荷さんと畑菜のからし和えをいただきます。
2月の最初の午の日は、稲荷神のお祭りなのです。
その時も西京味噌入りの粕汁が食卓に。
粕汁の白と、からし和えの若緑に、子供心に春の訪れを感じたものでした。
今日のお味、ほんまおいしいわ〜と
大人に混じり意見しながらいただくごはんの
おいしかったこと。
目をとじて思い出すと
今でもしあわせな気持ちになります。

現在は、祖母や母から伝えてもらった味わいに、
私が足したり引いたりと
ようやく思いの味が作れるようになりました。
そして、西京味噌入りの粕汁を
夫や両親が目を細めながら
きれいに飲み干してくれることが
何よりも嬉しく福々しい時間です。

季節折々の家庭料理を食べさせてもらった
祖母や両親に、
そして食を楽しむこころを
いつも傍らで支えてくれた
お味噌の存在に、ありがとうをこめて。

料理研究家 小宮真由(こみやまゆ)

料理研究家。おせち料理の専門家として、新聞・テレビ・ラジオへ多数出演。京都で料理教室「福千鳥」(会員制)を主宰。おせち料理や節句の食など、日本文化や季節感を大切にした行事食を伝える活動を行う。
1971年・京都室町生まれ。

PAGETOP